
EVENT REPORT / TAIPEI
『鯨が消えた入り江』 トークイベントレポート
イベント概要
6月21日(日)、台北市内の映画館にて、映画『鯨が消えた入り江』エンジェル・テン監督によるトークイベントが開催されました。
聞き手は株式会社マーチの田辺晴彦さんが務め、約1時間30分にわたり、作品制作の裏側や監督の想いについて語られました。
イベント途中には、劇中にも登場する「グアバ」が登場し、会場は和やかな雰囲気に包まれました。
その後、田辺さんが実施した企画「おしえてエンジェル」に寄せられた質問をもとに、監督への質疑応答が行われました。
本レポートでは、その中からいくつかの質問を抜粋してご紹介します。
EVENT INFORMATION
- 開催日
- 2026年6月21日(日)
- 会場
- 台北市内の映画館
- 登壇
- エンジェル・テン監督
- 聞き手
- 田辺晴彦さん(株式会社マーチ)
日本での大反響について
Netflixで全世界配信されている一方、日本では劇場公開をきっかけに大きな反響を呼び、多くの観客が映画館へ足を運んでいる――。
この現象について、エンジェル・テン監督は「とってもびっくりしました」と率直な驚きを語り、
日本の観客に作品を届けられたことを「奇跡」のように感じていると話しました。
また、撮影地を訪れる日本のファンや、SNSを通じて寄せられるメッセージについても触れ、 国境を越えて広がる作品とのつながりを喜んでいました。
『鯨が消えた入り江』を
監督することになった経緯
エンジェル・テン監督は、2022年に本作の脚本を受け取り、その魅力に惹かれて監督を務めることを決めたと説明しました。
当初の脚本に台湾の文化や空気感を取り入れるため調整を加え、作品の舞台により合った世界観を作り上げていったと語りました。
ロケ地選びでは、Googleマップで候補を探した後、実際に現地を訪れて撮影場所を決定。
中には、現場での発見やひらめきから生まれたシーンもあり、柔軟な発想を大切にしながら撮影が進められたことが明かされました。
一例として、塀の上で米糕(ミーガオ)を食べるシーンは、恒春県城 東門をロケハンで訪れた際、 「あそこで二人が座って食べたら良いのでは」と現場で急遽決まったものだったそうです。
主人公の衣装について
衣装は、2人の主人公の対照的な個性を表現するために慎重に選ばれました。
香港の作家である天宇は落ち着いた静かな性格を反映した服装に、
一方で台湾のチンピラのような阿翔は自由奔放さを表す花柄のシャツなどが選ばれました。
物語の進行に合わせた衣装チェンジも、彼らのキャラクターを象徴するものとなっています。
「グアバ」のキャスティングについて
劇中で重要な存在となる「グアバ」についても、キャスティング秘話が語られました。
脚本のイメージから、賢く演技のできる犬を探していたところ、監督の推薦によりジミーくんが起用されたとのこと。
撮影現場では非常に優秀で、スタッフの指示を理解するほど賢く、
物語の中で現実と幻想をつなぐ象徴的な存在として重要な役割を果たしています。
物語の解釈について
本作では、すべてを説明しすぎず、観客が自由に想像できる「余白」を大切にしたと監督は説明しました。
登場人物の関係性や物語の背景について明確な答えを提示するのではなく、 観客それぞれが自身の感情や経験を重ねながら作品を受け取れるよう意識して制作したと語りました。
ラストシーンについて
ラストシーンについては、当初の構想とは異なる形になったことが明かされました。
最初のバージョンでは、二人が最後まで出会えない悲しい結末が予定されていましたが、
「あまりにも切なすぎる」と感じ、現在の再会を描くエンディングへ変更したということです。
ただし、その再会が現実なのか、二人の未来がどのようにつながっていくのかについては、あえて明確に描かれていません。
海辺で寄り添う場面がいつの時点なのかも含め、観客自身の想像に委ねられています。
監督は、文通だけでは決して出会うことのなかった二人が、実際に台北で出会う瞬間こそが作品の核心であり、 「出会い」が人生を変える力を持つことを伝えたかったと語りました。
今回のトークイベントでは、『鯨が消えた入り江』が多くの観客の心をつかんだ理由と、 エンジェル・テン監督が作品に込めた細やかな想いが語られました。
ファンとのつながり、文化を越えて広がる物語の力、そして観客それぞれの中で完成する余白のある作品世界。
本作の魅力を改めて感じる、特別な時間となりました。